着物アロハが誕生するまで・ブランド誕生ストーリー
1点の捨てられた着物から始まった
始まりは職人も、デザイナーも誰もいませんでした。
あったのは捨てられそうになっていた着物だけです。
買い手のつかない着物を買い取り、机の上に置いて「どうしようか」と考えるところからこのブランドは始まりました。
そのときは着物の活用方法がわかりませんでしたが、職人が歳月をかけて仕立てた美しい着物が捨てられていく運命を本能的に受け入れられなかったのだと思います。
着物をどうするべきか、悩み続けたある日、開いた雑誌にアロハシャツの特集がありました。そこにはアロハシャツの起源はハワイへ移民した日本人が着物をシャツにリメイクしたことから始まったと書かれていたのです。
「これだ!」
と直感的に思いました。
FAR EAST FABRICの目標が決まった瞬間です。
着物が置かれた厳しい現実に立ち向かう
その後、着物の現状を調べていくにつれて、使い道がなく路頭に迷っている着物がたくさんあることを知りました。私たちが着物シャツへの挑戦を始めたと耳にしただけで多くの友人や着物リメイクファンが着物を提供してくれました。その数は数百にもなりました。
そして、衝撃的な数字を知ったのです。着物業界は40年で80%も規模を縮小させ、かつて購入された8億点もの着物がタンスで眠り活用されていないというのです。
これは、着物をシャツにリメイクして楽しんでいくだけでは解決できない。着物を現代で活用できる道を見つけなくてはならないと考えさせられる数字でした。
8億点もの着物を活用していくには長い月日がかかるでしょう。
しかし、何もしなければ近い将来着物は無くなってしまうかもしれません。
自分の孫やひ孫は着物を教科書や美術館で眺めるだけの物になっているかもしれないのです。
生産体制を作り、着物リメイク品が洋服選びのスタンダードになっていく道を模索し始めました。
そもそも洋服に向いていない着物生地
着物は直線で縫われることを想定されている生地なので、生地が伸び縮みしません。ジャストフィットに着ることが無いため伸縮性を持たせる必要がそもそもないのです。
しかし洋服は襟やアームホールと曲線部分が多く、縫いのステッチもより複雑になります。完成のシルエットは着心地に大きな影響を与えるためシャツへのリメイクは細心の注意を必要としました。
その緻密さは2mmずれるだけでシャツ自体が歪んでしまうほどでした。
一点一点、着物生地の特徴を見極める
私たちが気づいたのは
「すべての着物に同じ縫い方が通用するわけではない」ということです。
同じ正絹(シルク)であったとしても、産地や製法が変わるだけで生地の特徴が大きく変わります。むしろ同じ産地のものであっても、一度ミシン台に登れば違う表情や動きを見せるのです。
つまり、最終的に同じ物を完璧に作りあげていくことは製造において大切なことですが、着物生地と向き合うときは画一的に「こうすればいい」ではダメなのです。
着物の特徴を掴む
「1点1点、その子の特徴を見極めてハサミを入れて縫っていく」
創業時から共にしてくれている職人がふと発した言葉です。
この言葉にはFAR EAST FABRICの服作りの全てがつまっています。
ここでの特徴には生地の伸び縮みだけでなく、着物の大きな魅力のひとつである"柄"も入ります。どうすれば柄が綺麗にシャツに収まるか。そこも一点一点考えてから縫っていくのです。
「着物と呼吸を合わせる」
私たちが目指す着物リメイク服は画一的な指示書や型紙だけでは作れません。
「着物と呼吸を合わせる」
そこに気づけたことが私たちの強みになっていきました。
着物リメイクへの3つの約束
着物を活かす職人力
着物一つ一つと向き合い着物が持つ特徴を探るところから始めます。そしてようやくシャツの細部の話に入っていけるのです。
この非効率にも見えるやり方が2mmのズレも許さない高い品質維持に最も有効でした。
そして着物への高い理解を職人に求めるため私たちの着物リメイク品は唯一無二のものになるのです。
快適な着心地
どんなに格好良くて高価な服であっても着心地が悪いものは着なくなるものです。せっかく着物シャツをワードローブに追加してくれても、袖を通す度に覚悟を要するものであっては普及に繋がらないと考えています。
そのため着物の伸縮性や柄といった特徴を考慮し、着心地が良い、また明日も着たいと思える製法を追求しています。
環境への配慮
着物という偉大な伝統と文化を次世代につなぐことは環境への配慮でもあります。
全ての製品コンセプトの中心に再利用された着物生地があります。
またカーボンニュートラルの観点だけでなく、フェアな価格で製造を行い、普及に見合う価格設定を心がけています。