大島紬の魅力。最高の着物アロハ。

FAR EAST FABRICでもリメイクに一番多く使用されている着物生地が、「大島紬」です。

なぜ一番多くリメイク素材に選ばれているのかというと、初めて触ったときの感触が良かったという単純な理由でした。艶々していて、なめらかで、さらっと、それでいて弾力があり丈夫。まるでスポーツウェアの化学繊維に負けないくらいのしなやかさに、虜になりました。

最高の着物生地、大島紬の魅力

大島紬の特徴

大島紬の特筆すべき特徴は、

  1. ツルツルした生地。
  2. 濃い独特の色味。

特にツルツルとした生地感と渋い黒系の色味は大島紬にしか無く、生地の判別を行うときも専門家の方が大島紬のみをまず箱に入れてまとめてくれます。それほどはっきりとした特徴がある生地なのが大島紬です。

今回は、この大島紬の特徴や歴史、その魅力をご紹介していきたいと思います。

大島紬の歴史

大島紬の歴史には諸説あります。様々な説があるのですが一般的に伝わっている説と、こういう説もありますというのを織り混ぜて紹介していきます。

まず絹の織物は、唐から奈良時代に伝わり製造が始まったようです。1400年前の話です。紬は野良着とも呼ばれるように、ラフな着物という立ち位置ですが、大島紬は高級紬として商人の番頭や名士がイキの一つとして好んで着たと言われています。超高級品だけどフォーマルな場所にはふさわしくない。いまでいう高級デニムのようなものでしょうか。もちろん大島紬は朝廷や幕府への重要な献上品のひとつでもありました。

1700年代にはあまりの贅沢品なため、薩摩藩から着用禁止令が出されます。このときに薩摩藩に見つからないために泥の中に大島紬を隠したら黒く染まったという説もあります。

後段でも紹介しますが奄美大島の泥を使うという染色方法の起源には諸説あり、織元でもどの説を採用しているかはまばらです。
それがまたロマンがあるところではありますが。

泥染めをする人
車輪梅染めをする人
車輪梅を砕く人

大島紬の歴史 / 奄美の里

ツルツルした生地の正体は糸にあり

大島紬の最大の特徴はそのツルツルとした質感です。これはぜひ機会があったら触れてほしいです。いままでに経験したことない感触です。いつまでも触っていたくなるようなしなやかさがあります。

このツルツルした最大の特徴を生み出している秘密は「糸」にあります。大島紬以外の紬とは使われている糸が異なっているのです。

糸の違い

大島紬以外の紬

  • 結城紬
  • 塩沢紬
  • 牛首紬
  • 群上紬
  • 信州紬
  • 久米島紬 など

着物は大きく、次の2種類に分かれます。

  1. 動物性の糸
  2. 植物性の糸

動物性は、絹やウールが代表的な素材です。絹は、蚕(いわゆる蛾の一種)という昆虫から取られ、この蛾が成虫になる前のサナギになるときに自分の身体を覆うために口から吐き出す糸のことです。

絹は主に高級着物に使用されています。また、高級シャツなどにも使われています。ウールは羊の毛で身近なものではスーツやニットセーターなどによく使われている素材です。

植物性の糸は綿と麻です。軽やか、爽やかさが特徴なのでポロシャツや、浴衣、夏の着物として使われます。どちらも機械生産との相性が良いので、普段着の洋服素材として最もよく使われています。

まず紬は、動物性と植物性の中で動物性の絹を使って作られたもののことを言います。つまり高級素材です。
この高級素材である絹を用いて織られている点では大島紬も他の紬と同じなのですが不思議なことに完成品の風合いは対照的になります。

ツルツルとザラザラ。その違いは同じ絹の中でも糸の違いにありました。

生糸(大島紬)と紬糸(他の紬)の違い

蚕の繭
紬糸

絹は生糸(キイト)と紬糸(ツムギイト)の2つに分けられます。
まず簡単に2つの糸の違いを説明します。

生糸は蚕が口から出した糸そのものです。そして紬糸はその糸の中でまっすぐでてこなかった糸です。(かなりざっくり説明しております)
その結果、生糸と紬糸は糸の太さに大きな違いがあります。生糸は1匹の蚕が吐き出した糸を取り出していくのでが細いのが特徴です。一方、紬糸は生糸に加工することができなかった糸をのばしまとめてできたものなので太いものもあれあば細くもあり、いびつな形をしています。

どちらも蚕が吐いた糸を使うという点では同じですが、生糸が1本の細い線に対して、紬糸はいびつな形の糸をまとめあげたものです。そのため生糸を使う大島紬は糸が細いため柔らかしなやかな生地に仕上がり、紬糸を使う結城紬などは糸が太いためざらっとした生地に仕上がるのです。

生糸はなめらかに仕上がりますが、紬糸が使われるものは指先で触った瞬間は麻かと一瞬感じます。しかし、袖を通してみると絹と麻では風合いはまったく異なります。やはり麻に比べて絹で作られる紬糸のものは丈夫でシワになりにくく、なによりも軽くなくしっかりとした重量を感じることができます。

生糸の大島紬のアロハ

生糸の大島紬のアロハ

紬糸の結城紬アロハ

紬糸の結城紬アロハ

大島紬のしなやかな生地は絹の中でも生糸が使われているからでした。
この生糸は1匹の蚕からとっていく糸なので手間も時間もかかります。それだけでも大妻紬の貴重さを知ることができるかと思います。

次は、大島紬の渋くて濃い色味の秘密に迫っていきたいと思います。

奄美大島の大自然が作りだす色

大島紬独特の色味は結論から言うと、奄美大島の大自然が作り出しています。
完全オーガニックなのです。

天然素材で色染めされたアロハ
着物アロハの例

奄美大島の天然素材でこのような色が出せるのです。

大島紬の色は薔薇と泥で出す

大島紬の染料として使われるのが、車輪梅(シャリンバイ)という春に梅のような花を咲かせるお花の幹です。この車輪梅は薔薇の仲間です。車輪梅の幹を煮詰めた窯に生地を漬けて色を出していきます。

しかし、この車輪梅に糸を付けても薄いベージュ色になる程度です。
ですが、大島紬といえば、このような濃い黒系のイメージが強いかと思います。ベージュからは程遠い色合いです。
それでは、どうやって色を濃くしていくのか。

それは、シンプルに「何度も漬ける」です。

黒みのある大島紬のアロハシャツ

完成品のデザインにより変わりますが、80回以上、漬けて色を濃くしいきます。
それでも濃いベージュになる程度でよく知る大島紬の色にはなっていません。

いよいよここで登場するのが奄美大島の泥です。大島紬は「泥大島」という名前を持つとおり、泥につけることで黒く染めていきます。

しかし、泥の色が糸に染みて黒くなるわけではありません。それなら雨に濡れたら色が変わってしまいますし、クリーニングに出したら台無しです。黒くなっていくのは先ほど出てきた車輪梅と奄美大島の泥が織りなす化学反応です。

車輪梅のタンニン

車輪梅にはタンニンが含まれています。
タンニンは酸性で、お茶やワインを飲んだときに口の中で感じる苦味の正体です。
このタンニンは革をなめすときにも使われます。絹も革も共通しているのは生きた動物のものを使うということです。そのため腐敗を避けるために処置が必要でした。おそらく車輪梅を使っていたのも、こういった動物性の素材の保存のためだったのかもしれません。

車輪梅のタンニンに奄美大島の泥に含まれる鉄分が加わえることで、酸性のタンニンと泥の中の鉄が化学反応を起こし黒色に染まっていきます。

この製法は紬の中では奄美大島で作られる大島紬で大きく発展しました。泥を染色に使う紬は他にも久米島紬、黄八丈紬がありますがそれぞれの地域の泥を使うことで色味が変わるのも面白いところです。

諸説あるそうですが、紬は600年代から作られていたそうです。いったい当時の人はどうやってこの染色方法を見つけたのでしょうか。今よりも化学知識が無い時代です。偶然だったのかどうか。農作業をしたあと、田んぼの中に着物を置き忘れ、翌日見てみたら漆黒色に染まっていたという偶然の発見が泥染めの始まりになったという説もあります。

いずれにしろ大島紬は化学染料ではなく、自然界にあるものを使って作られる先人達の偉大なる知恵と経験によって作られていました。

FAR EAST FABRIC の着物アロハ

黒に染まる大島紬

黒に染まる大島紬

同じ泥染めの久米島紬

鮮やかな格子柄の黄八丈

鮮やかな格子柄の黄八丈

同じ泥染めで作られる久米島紬は、製法が大島紬とほぼ同じです。(久米島から奄美大島津に紬の技術が伝わったという説もあります)車輪梅を使うこと、泥で染めていくこと。
しかし、完成系は大島紬が黒っぽくなるのに対し、久米島はくすんだ茶褐色系の色に染まっていきます。泥と植物の産地が変わることで仕上がりが変わる例でもあります。
また同じく泥染めを行う八丈島で作られる黄八丈は刈安(カリヤス)というススキの仲間の草を使って染めます。格子柄はマダミというクスノキの樹皮を使っています。
同じ泥染めの仲間でも産地の違う泥、植物を変えることでここまで仕上がりが変わるのです。

大島紬の魅力は強力なクラフトマンシップ

大島紬の歴史や特徴を見てきましたが、歴史の長さ、製作の過程どれをとっても途方もない職人技を感じます。

天然の素材で、人の手で加工し、手間をかけてひとつひとつ仕上げていく。これほどロマンが詰まった偉大な着物が着られることなくタンスの中で眠り、中古市場でも必要とされず捨てられる運命になっているのは改めてもったいないことだと感じます。

これからもFAR EAST FABRICは、大島紬のロマンに負けない素敵なリメイク作品を世に出していきます。